#STORY 003Noとは言わないモノづくり
開発部
K・T出身学部:自然科学研究科 生物資源利用学専攻
学生時代、イネが土壌栄養成分を吸収するメカニズムを遺伝子レベルで調べる研究を行っていました。研究成果は世界で最も権威ある科学雑誌「ネイチャー」に掲載される機会にも恵まれ、充実した研究生活を送っていました。畑で農作物を育てていた私が、とあるご縁で就職したレクザムは、電気や機械の用語が飛交う、まさに「畑違い」の職場でした。
開発部に配属された当初、飛交う言葉が分からず困惑した私が、良き先輩や仲間にフォローして頂き、数ヶ月で仕事に対応できるようになりました。そんなタイミングでそれまで社内で前例の無かった「生体分子の分析装置」の開発プロジェクトに参加することになりました。当時は社内に知識を持った人もおらず、まずはその装置の基本調査から始める状況でした。
当時経験年数の浅い私に前例の無いプロジェクトを割当てた上司の采配は、今振返れば思い切った判断だったと思います。「生体分子」が相手ということで農学部出身の私に白羽の矢が立ったと思いますが、数ヶ月前まで分析装置を「使う側」だった私が、その日から「作る側」へと180度立場が反転しました。当然考え方も一変し、良い分析装置を作ることの難しさ・厳しさから、皆で協力しそれに挑戦するチームワークの大切さ、当初からしっかりとしたビジョンを持つことの重要性等、今まで想像もしなかった世界が次第に見えてくるようになりました。
入社した当時は「生体分子」を扱う生化学分野出身メンバーは少なく、電気・メカ・ソフト・光学分野の文化の違いに苦労の連続でした。異分野の仲間にも製品の要求仕様や性能を正しく理解して貰えなければ良い製品作りはできません。奮闘する中でやはりコミュニケーションの大切さを痛感しました。
それでもレクザムには長年培った眼科系医療機器の「光学技術」や「画像処理技術」があり、研究用分析装置や臨床検査機器の開発を行う上で極めて有利な立場にありました。この先人の積上げた財産には率直に感謝しなければなりません。
開発したプロジェクトがどんなに難しい局面にある時でも、上司・先輩方・同期の仲間から支えられ、他部署の方々の協力のもとプロジェクトは進み、ついには一つの形となって出荷を迎えます。製品の初出荷時にはちょっとしたセレモニーが行われることがあるのですが、この時にお祝いに集まった大勢の関係者を前にすると、開発プロジェクトというものが本当に多くの人の力によって動くものだということを改めて実感し、感謝の気持ちでいっぱいになります。どんなに苦労してもこの時が一番嬉しいですね。
最初に担当した開発プロジェクトは「表面プラズモン共鳴現象」を応用した分子間の結合を観察する装置でした。この装置の開発では光反射角度を10万分の1度という精度で観察する必要があります。この装置では厚さが数百ミクロンしかない極薄光学接着部材を開発する必要がありましたが、開発チーム一丸となって課題を分割し、一つ一つの課題を解消することで最終的な製品の形に導くことができました。
次に担当したのは「エバネッセント波」という特殊な光を使う、研究用の高感度な生体分子検出装置でした。1兆分の1グラムといった痕跡量の生体分子を検出できる装置で、身近なところでは化粧品メーカーでテープ採取の皮膚片から肌診断を行うシステムにも採用されています。本開発テーマでは全国の大学・研究機関・企業と共同研究を重ねていく中で、自社だけでは実現できない開発課題も、他社と強みを出し合うことで乗り越えることができるという例を、いくつも経験することができました。
複数の研究用分析機器の開発を通じて、様々なノウハウの収穫がありました。これらの成果をベースに近年では「臨床検査機器」の開発プロジェクトに駒を進めています。社内では眼科系医療機器に次ぐ事業の柱への成長が期待されており、気の抜けない毎日です。
臨床検査機器の分野では数多くの制約の中で、その当時の最善策として纏め上げられた従来装置を越える仕様を纏める必要があります。部品の選択一つにも様々な観点からの検証試験が必要となり、ユーザーに与える影響範囲の大きさにも身の引締まる思いです。
しかし今回のプロジェクトも周囲からの協力なサポートを頂きながら「成功する」いや「成功させる」という強い信念を持って取組んでいます。臨床検査機器分野でのレクザムのチャレンジは続きます。どうか今後の成長を楽しみにしてください。